『図書』7月号の冒頭で、小嶋稔という地球惑星科学者が次のように書いています。長いですが引用します。
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福島原発事故は放射性物質の流出で環境へ甚大な災害をもたらした。さらに私を含む同位体地球化学を専攻する者の多くは、福島第一原子力発電所第1号炉のメルトダウンした核燃料が再臨界を起こし、大規模な核分裂連鎖反応を起こすのでは、という危惧を払拭し切れない。もしそのような事態ともなれば、東日本が壊滅するとの菅元首相の警告が現実のものになってしまう。加えて、こうした危惧を裏付けるように、去年7月に経済産業省で行われた「福島第一原子力発電所事故に関する技術ワークショップ」での報告は、たいへんショッキングなものであった。
このワークショップでは、2011年3月11日の原発事故の直後にウランの核分裂連鎖反応の再臨界が起きる可能性があったことが議論されている。綿密な計算結果から連鎖反応の可能性が高かったにもかかわらず、なぜか大規模なウランの核分裂連鎖反応が起きなかった。しかし、この幸運は、海水の注入により、予想もしなかった塩素(正確には塩素系同位体のひとつ塩素36)の中性子吸収効果という、まったくの偶然に助けられた結果だったと結論している。さらに、この驚くべき事実に関する一般への報道が十分にはなされていない、というのもまた驚きである。(後略)
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